電子定款の場合は4万円の収入印紙が不要になります。
電子定款とはどのようなものか
株式会社を設立する場合、定款を作成し、その定款を公証人に認証してもわなければいけません。認証とは、その文書などが適正な手続きに従っていることを公証人や市区町村長(公的機関)が証明することです。定款の認証につきましては、書面で作成した定款を認証してもらい方法と、電子化された電子定款を認証してもらう方法があります。特に電子定款は、書面による定款認証時に必要な4万円の収入印紙代が不要ですから、会社設立費用を節約につながり、広く浸透しています。
電子公証制度とは
公証人が行う事務を公証業務といいます。公証業務には、上記の定款認証業務の他にも、公正証書の作成、確定日付の付与などがあります。これら公証業務の対象となる事務で取り扱う文書は紙媒体が中心でした。しかし、最近では、電子文書の場合も一定のものは公証業務の対象になりました。この制度のことを電子公証制度といいます。
電子公証制度にも様々あります
電子公証制度の対象は、公証業務のうち、電子文書で作成された私署証書や定款を公証人が認証する場合や電子文書に確定日付を付与する業務です。しかし、すべての公証人が電子認証制度に対応できるわけではありません。電子公証制度に対応できるのは法務大臣に指定された「指定公証人」だけです。実際は、かなりの人数の指定公証人が存在しますので、ほとんどの地域で電子公証ができます。
電子定款を利用することで、指定公証人に電子ファイル形式になっている会社の定款の認証を嘱託できます。その定款は20年間保存してもらうことができます。また、電子ファイル形式で作成された私署証書の認証を嘱託し、その私署証書を20年間保存してもらうこともできますし、電子文書に確定日付を付与するように請求したり、その電子文書を20年間保存してもらうこともできます。電子文書の認証を受けたり確定日付が付与された後は、その電子文書の謄本の請求を指定公証人に対してすることもできます。また、認証を受けたり確定日付が付与された電子文書が改ざんされていない真正のものであることの証明(情報の同一性に関する証明)を指定公証人にすることもできます。
このように電子公証制度には様々なものがあります。その中でも代表的であり、もっとも利用されているのが電子定款です。
電子定款による定款認証と従来の定款認証との違い
紙媒体での定款は紙で作成します。パソコンのワードなどで作成したものを印刷するのです。そうしてできた定款に収入印紙を貼り、公証役場に持っていき定款認証を受けます。これに対して、電子定款の場合は、パソコンのワード等で作成した定款をODF化し、法務省オンラインシステムを使って認証の嘱託をします。ただ、定款認証時には、公証役場に出向く必要があります。認証は公証人の面前で行わなければならないからです。つまり、紙媒体の定款認証と電子定款の認証の手続き上の違いは、法務省オンライン申請システムを利用して定款を公証役場に送信するかどうかの違いしかありません。
定款認証の手数料について
電子定款につきまして、定款認証手数料は以下のとおりです。
・定款の認証 5万円(紙媒体も同じ金額)
・電磁的記録(電子データ。この場合は電子定款のこと)の保存 300円
・同一の情報の提供(謄本の請求) 700円(紙媒体の場合は謄本1枚につき250円)
このうち、電子定款による認証の場合は、紙媒体の認証時に必要な収入印紙4万円は不要になります。また、謄本を書面で受け取る際には、1枚あたり20円が加算となります。
電子定款を個人が行うことのメリットは少ない
電子定款の最大のメリットは収入印紙代の4万円が不要になり、設立費用が節約できることです。しかし、電子定款を行うには事前準備が必要であり、相応の費用もかかります。電子定款をするには特別な機器やソフト、電子証明書が必要になります。電子証明書を申し込む機関によって多少の金額差はありますが、およそ10万円弱は必要です。会社設立を仕事にしている専門家はともかく、一般の方が何社も会社設立することはあまりありません。ですから、一度しか会社を設立しないのであれば、電子定款で4万円の収入印紙代を節約できたとしても、電子定款のための事前準備にそれ以上の金額がかかってしまい損をしてしまいます。そのため、もし個人で電子定款の利用をお考えの場合は、費用の面などをよく考慮なさるほうがよいでしょう。