定款に定めることにより株式譲渡の制限をすることができます。
株式譲渡は原則として自由です
オーナーとしての地位を退きたい株主がいた場合、この株主が会社から出資した財産を返してもらうことは認められていません。そのため、株式の譲渡を原則自由として、株主が会社に出資した分を回収できるような制度をとっています。これを「株式譲渡自由の原則」といいます。
しかし、家族的な経営をしている中小企業が現在の日本国内の株式会社のほとんどを占めています。このような中小企業でも「株式譲渡自由の原則」を例外なく適用してしまうと、会社経営に好ましくない人間が経営に参入してくる危険があります。そのため、株式譲渡によって他者の経営への参入を防ぎたい会社は定款によって株式の譲渡を制限することができるという決まりを定めることができるのです。
株式譲渡制限の方法
株式の譲渡をする場合には会社の承認を必要とする旨を定めることを株式の譲渡制限といます。定款にこの定めをした場合は登記しなければなりません。また、株式の譲渡をする場合に会社の承認を必要とするのは、現在の株主以外の者に株式を譲渡する場合に限ることを定めることもできます。具体的には、次のような会社の機関による承認が、「会社の承認」にです。なお、会社に承認を求めることができるのは、株式の譲渡人と譲り受け人です。
(1)取締役会設置会社では、取締役会が承認機関です。
(2)取締役会を設置しない会社では、株主総会が承認機関です。
(3)定款で定めた場合は、(1)や(2)以外の機関でもよいとされます。
株式譲渡の承認手続き
株式譲渡の承認手続きは通常、次のような手順によります。
まず、株式の譲渡人と譲受人が、上記記載の承認機関((1)~(3))に対し、譲渡する株式数、譲受人の氏名または名称、会社が譲渡を承認しない場合には会社指定の指定買取人に買い取らせるかどうか、を明確にします。
次に、会社の承認です。会社が株式譲渡を承認すればそれでよいです。しかし、承認しない場合には、会社自身による株式の買い取り、または指定買取人による買い取らせることになります。この際、買い取り価格は協議により決めます。買い取り価格が折り合わない場合は、申し立てにより、地方裁判所で決定します。
なお、株式譲渡の承認請求があった日から2週間以内に承認請求者に対して会社が通知をしなかった時や承認しないことを決定した時から40日以内に承認請求者に通知をしなかった時は、会社は株式の譲渡を承認したものとして扱われます。譲渡承認をしたものとみなされると、他人に会社を乗っ取られる危険があります。会社で買い取るかきちんとした人物を指定買取人に指定して、通知しましょう。
【定款の記載例】
(株式の譲渡制限)
第〇条 当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない。但し、当会社の株主が当会社の株式を譲渡により取得する場合は、株主総会の承認をしたものとみなす。
株式譲渡制限記載のポイント
上記の記載例は、取締役会を設置しない会社が、すべての株式につき譲渡制限をする場合を想定した規定です。但書では、現在の株主が譲渡を受ける場合に限り、会社の承認は不要であることを定めています。このように会社の承認を必要とする場合の制限を設けることもできます。